住宅建設会社の経営者が
大赤字の福祉事業、介護施設運営に
踏み込んでしまった話(前篇)
実は、ハデに「失敗」しています
はじめまして。藤村典久と申します。滋賀と岐阜で「株式会社まごころ住宅」という住宅建設会社を経営してます。
日本が本格的な高齢化社会を迎える中、老人ホームなどの福祉・介護分野へ参入する企業も増加しています。
しかし、利益を出せる事業者と、そうでない事業者に二極化しているのが、介護ビジネスの現状です。
残念ながら弊社は、後者。
今でこそ「老人ホームFCケアリー」を皆様にご提案させていただいていますが・・・
過去に、全く利益を出せない大赤字の福祉事業、介護施設運営に踏み込んでしまった失敗事例を持っております。
世の中には、「こうすれば儲かりますよ」とか「成功しますよ」的な話が沢山あります。
(僕のところにも毎日大量の営業メールが届きます。)
ですが、経営者として本当に聞きたいのは、いい話ではなく「失敗する理由」です。
なぜ失敗をしてしまうのか・・・
特に興味がある事業における同業他社の「リアルな失敗事例」を聞きたい方は、沢山いらっしゃるのではないでしょうか。
ですので…本日は、僕がなぜ福祉事業で「ハデに失敗」してしまったのかをありのままにお伝えしたいと思います。
(お恥ずかしい話ではありますが…)
福祉事業に参入することになったきっかけ
まず、僕が経営している住宅建設会社「まごころ住宅」がなぜ福祉事業に参入することになったのかを簡単に説明させていただきます。
きっかけは、うちの母が脳腫瘍という病気で手術をしたことです。
高次脳機能障害という状態になってしまい、父が6年くらい介護したんですが、そろそろ限界だなっていうのが見えてきました。
「それなら、母親が居られる場所、グループホームを作ったらいいやん!」
と、福祉事業のことを何も知らないのに、単純に考えてしまいました。
これが弊社が福祉事業に参入したきっかけであり、今思えば、すべての失敗の始まりでした。
グループホームでの失敗
僕が建てたのは、認知症対応の地域密着型のグループホームという施設です。補助金も出ますが、事業採択されるのに2年ほどかかりました。
当時は、福祉事業のこと、何も知らなかったのですが、自分が建設会社ということもあり建物に関しては、「とにかくええものを建てよう!」とありとあらゆる良いものを入れました。
で、何がおこったかというと・・・
まったくの採算度外視の建物を建ててしまったんですね。
地域密着で特定事業になりますので、もちろん今でも運営はしていますが、毎年600万~700万円の赤字を出し続けています。
ちなみにこのグループホーム、「えくぼ」という名前で彦根でやっています。定員わずか9名の大きな大きな立派な施設です(笑)。
ご興味がありましたらホームページをご覧ください。
やり方を間違えると、いくらいい施設でも赤字を出し続ける施設を作ってしまうことになる…これが僕の一つ目の失敗です。
サービス付き高齢者住宅(サ高住)での失敗
その後、今度は父がALS(筋萎縮性側索硬化症)になりました。
1年くらいは元気だったんですが、だんだん身体がしんどくなってきて、「父親が入る施設の準備を急げ」ということで、サービス付き高齢者住宅(サ高住)を作ることになりました。
グループホームは、自分がオーナーだったのですが、サ高住は、某家賃保証会社を付けて、土地オーナーさんを口説いて建てさせてもらいました。
もちろん運営も自社でやりました。
結論から言いますと…サ高住の運営だけでは利益の出ない事業ってことがよぉ~くわかりました。
(運営の失敗については、後ほど書かせていただきます。)
建物を建てた時には、多少の利益が残ったんですけど、運営でほぼ吐き出したという形です。
ちなみにサ高住の建築に関して、一番失敗したのがキッチンの調理器具です。
すべてホシザキの新品です。すっごく豪華な…本格的な中華料理ができそうなでっかいコンロが入ってました。
しかし、施設で食事を作ってみたらすべて湯煎なんです。お湯で温めるだけ。
しかも、再加熱カートも入れていたので、お湯すら沸かす必要がない…。
今、その立派なコンロの五徳には、コンパネみたいな板がひかれていて、その上にご飯を炊く電子ジャーが置かれています。
しかも、その横には、三升炊きのガスの炊飯器が2つビニールに入ったまま新品の状態で置いてあるんです。
何が言いたいかといいますと・・・
運営側のことを何も考えずに全部セッティングされていたんです。調理器具は、オーナーと運営の折半だったので、半分うちの会社が負担しています。もちろん、すべて無駄な費用です。
使わない豪華な調理器具「ホシザキ」が綺麗に収まっているキッチン、そしてその建築会社は、うちです。悲しいですね(笑)。
運営の失敗~福祉業界の人に一任すると失敗します!
次に、施設運営の失敗について書かせていただきます。
建設については、もちろん専門分野ですから建て方さえわかれば建てることができます。(当初は、それすらわかっていなかったのですが…)
でも福祉事業・介護施設の運営については、まったくの門外漢でしたので、実務を知っている介護のベテランの方にお願いして来ていただきました。
で、何がおこったかというと…。
入居者は、そこそこ入ってきているのに、なかなか事業収支が合ってこない…全然満床にもならない…。
結局その方、まったくマネジメントが出来なかったんです。
「介護とはこうあるべき」という議論はします、でも収益性のことは一切考えていませんでした。
当時、僕もあまり踏み込まなかったんですけど、事業収支が悪くなってしまう理由が完全にブラックボックス化、改善策もすべて後手後手…。
結果、まったく事業をプラスにできませんでした。
実は、施設運営も社長が采配を振るえる事業です
僕が、これから介護事業に新規参入を検討されている方に、何よりお伝えしたいのは・・・
マネジメントとかお金に関することは、社長か、できれば社長と変わらない権限を持ってらっしゃる方に担当になってほしいということです。
もちろん、福祉業界の方は、雇うんですが…。
ここ、すごく重要なんですけど――。
実は、施設運営も社長が自分で采配して出来る事業です。
福祉がわからないからと運営を福祉業界の人に一任すると失敗します。
ですが、建築側での収益の出し方、福祉のほうのマネジメントのやり方など、ノウハウがわかれば、事業全体を通しての改善策が見えてきます。
建築は建築で伸ばす方法があります。福祉は福祉で伸ばす方法があります。
これまでは、失敗ばかりでしたが、今であれば、福祉事業~施設運営は、やりかた次第で上手くいくと断言できます。
(後編では、両親の近況、会社の現在の状況、失敗の上に行きついた老人ホーム事業の形などについてご説明します。)